ホテルに入るタイミング

私がまだうら若き乙女だったころの話。
彼と何度目かのデートも滞りなく進行し、今夜あたりが一歩踏み込むタイミングなのではないか、と思われる雰囲気が2人の間に漂っていた。

私もやぶさかではなかったが、何しろうら若き乙女だったので「えー、今宵も更けてまいりましたし、そろそろ良い頃合いではないでしょうか」などと、自分から切り出すのもためらわれた。
ここはいささか古風ではあるが、男性ににリードしてもらうのが望ましいと、彼の決心を待つことにした。

ところが、である。
私も若かったが彼も若かったので、そのようなタイミングをどうとらえてよいか図りかねているのか、先ほどから同じエリアをぐるぐる歩き続けている。

つないだ手は汗でびっしょりだし、私はヒールを履いた足が痛んできた。
それでもひたすら歩き続ける彼に、小1時間は耐えていた私であるが、ついにトイレを我慢できなくなり、その夜は解散となったのであった。

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