昔の恋人との再会に燃えがる

取って付けたような理由を2、3挙げると、彼は一方的に別れを告げた。
呆気にとられて涙も出なかった私は、じきに彼のことを忘れていったが、とにかくふられたらしいということは記憶のファイルに残った。

それから数年。
誰から連絡先を聞いたのか、彼が電話をかけてきた。

何のための電話なのかいぶかしむ私に、彼は昔の思い出話を懐かしそうにしている。
どういう経緯を辿ったかはわからない。
しかし、彼の中では、私との付き合いが「良い思い出」というフォルダーに分類されているようだ。

記憶なんて主観的なものだから、彼と私の記憶のどちらが正しいかは今さら判断できない。

そんなことをぼんやり考えていた私は、彼の「タイムマシンに乗って過去に戻れるとしたら、昔の俺に『彼女と別れるのは間違いだ』と教えてやるんだけど」というセリフで我に返り、「私はタイムマシンに乗ったら、昔の私に『その男と別れて正解だから』って言うわ」と電話を切った。

そして彼の記憶ファイルを「失恋」フォルダーから軽やかに削除した。

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